引き続き、QAエンジニアの私がこの本より、一般の方たち向けにかみ砕いていきます。
標準化の起源
例えば、車を運転する方は、交通ルールを守らなければいけないのは、当然でしょう。例として、
- 赤信号:止まれ
- 黄信号:止まれだが、止まったら危険な場合は進める
- 青信号:気をつけて進める(歩行者がいれば、止まれ)
というルールがあります。多くの方で決められた車の運転に関するルール・規則があるように、会社で決められた仕事のやり方・手順を「標準化」と呼びます。
この起源は、紀元前のピラミッド建設でも、2つあったと言われます。
- 計測の基準(ピタゴラスの定理・円周率etc…)
- 作業手順
深掘りするとキリがないですが、約4500年前から今の会社のような作業の標準・標準化が存在したと考えられます。
ニューアプローチ
ISOマネジメントは、1970年代に鉄の女と言われたサッチャー政権で普及したと言われています。ここから、ISO9001のスタートと言われています。
ヨーロッパは、様々な国があり、ヨーロッパ連合(EU)に27カ国が加盟しています(2022年3月現在)。最近では、イギリスが離脱しました。異なる国が違う法律で運用すると、大変な労力となります。だから、27カ国で共通の法律(EC指令)を策定し、27カ国で流通させる、これが「ニューアプローチ」です。
しかし、今はEC指令では不十分です。ここから、ISOなど国際規格・欧州標準化委員会が加わり制定されたものが、EN規格です。
EC指令+ISO9001=EN規格
というわけで、イギリスがISO9001などの標準化に力を入れていたことが始まりでした。
標準の分類その1:国・政治・経済の分類
◎国際標準(=全世界共通)
- ISO(International Organization of Standardization/国際標準化機構)
- IEC(International Electrotechnical Commission/国際電気標準会議)
◎地域標準(=ヨーロッパ諸国共通)
- CEN(European Committee for Standardization/欧州標準化委員会)=ヨーロッパ特有のISO
- CENELEC(European Committee for Electrotechnical Standardization/欧州電気標準化委員会)=ヨーロッパ特有のIEC
◎国家標準(=国共通)
- JIS(Japanese Industrial Standards/日本産業規格)=日本特有の規格
- BS(British Standard/英国標準)=イギリス特有の規格
- DIN(Deutsches Institut fur Normung/DIN規格)=ドイツ特有の規格
団体標準(=自動車メーカー共通)
- IATF16949(自動車産業のための品質マネジメントシステムに関する国際規格)
国・地域によって、標準・規格が異なる例でした。
標準の分類その2:規格作りのプロセスで分類
◎デジュール標準(公的機関⇒標準を制定/スピード遅い)
- ISO(国際標準化機構)・IEC(国際電気標準会議)⇒国際標準を制定
- JISC(日本産業標準調査会)⇒JIS規格を制定
◎フォーラム標準(特定企業間⇒標準を制定/スピード中)
- 自動車業界で共通規格を制定
- 空調業界で共通規格を制定
- エレベーター業界で共通規格を制定etc…
◎デファクト標準(個別企業内の規格/スピード速い)
- 特有の性能に関する規格
ISO(国際標準化機構)(=全世界共通規格)
本部:スイス ジュネーブ
日本からは、JISC(日本産業標準調査会)が1952年に加盟
全産業分野規格数:23192規格(電気・通信・電子技術分野を除く/2020年5月)
◎目的
- 製品・サービスの国際的な取引の促進
- ビジネスプロセスの管理の改善
- 社会的&環境的なベストプラクティス(=最高コスパ)の普及
- 知的・科学的・技術的・経済的な活動の分野での協力の発展
◎ISOが制定した規格
- ねじ(ISO68)
- フィルム感度(ISO5800)
- 非常口のマーク(ISO7010)
- 品質マネジメントシステム規格(ISO9001)
- 環境マネジメントシステム規格(ISO14001)
ISOマネジメントシステム規格=ISO(国際標準化機構)が策定した規格
国家標準(JIS) VS 国際標準(ISO)
◎日本の国家標準(JIS)
JIS(Japanese Industrial Standarads/日本産業規格):日本の産業標準化の促進を目的とする産業標準化法に基づき制定される国家資格
⇒Aの車燃費:15km/L Bの車:25km/L 一見Bが良いと思いますが、
A:中古コンパクトカー 70万円 燃費15km/L B:新車軽自動車 150万円 燃費25km/L
ここにBに燃費偽装問題があれば、迷わずAの車を選ぶでしょう。数値の正確性も規格にあります。
婚活でも、年収1000万円以上の男性希望の女性は、それ以外を見られない視野が狭い女性と思います。年収のみならず、お金の使い方・価値観などを総合的に見て、視野が広い人となるでしょう。マッチングアプリでは年収をウソつくこともザラにあります。これを議論したくはないので、端折ります。
ISO規格⇒翻訳⇒JIS規格 これが基本で翻訳の整合の度合いが、
- IDT(一致):技術・構成が一致 ISO=JIS
- MOD(修正):技術・構成を修正&区別可能 ISO⇒修正⇒JIS ISO vs JIS 区別可能
- NEQ(同等ではない):技術・構成が不一致&区別不可 ISO vs JIS 区別不可
中にはISO規格関係なく、日本独自のJIS規格もあります。
国際標準 VS 国家標準の整合化
◎WTO/TBT協定(世界貿易機構/貿易の技術的障害に関する協定)
1995年に締結
各国の強制法規(絶対に守らないといけない・違反すると罰金など)・任意規格(守れない箇所があっても罰金にならない・顧客などの信用の獲得には必須)
各国の強制法規当局・標準化機構⇒『WTO事務局』に通知⇒加盟国コメント(※)⇒強制法規当局・標準化機構(※コメント受付期間:最低60日間)
・日本←→アメリカ・中国の貿易例
日本規格協会(JSA)⇒日本の基準を『WTO事務局』に通知⇒アメリカ・中国よりコメントもらう
ISO規格 発行プロセス(全世界共通規格)
①新規業務提案⇒②作成⇒③委員会⇒④照会⇒⑤承認⇒⑥発行 36カ月以内にまとめられる
①新規業務提案(新規業務(NP)⇒作業原案(WD))
- 専門委員会(TC)・文科委員会(SC)のPメンバー(有権者)の2/3以上賛成
- 5カ国以上のPメンバー(有権者)が積極参加の意思表明
②作成(作業原案(WD)⇒委員会原案(CD))
- エキスパート:作業原案(WD)を作成⇒専門委員会(TC)・文科委員会(SC)に提出
- 専門委員会(TC)・文科委員会(SC)⇒委員会原案(CD)⇒登録
③委員会(委員会原案(CD)⇒国際規格原案(DIS))
- 委員会原案(CD)⇒専門委員会(TC)・文科委員会(SC)⇒コンセンサス(全員賛成)の形成 または
- 専門委員会(TC)・文科委員会(SC)のPメンバー(有権者)の2/3以上賛成
④照会(国際規格原案(DIS)⇒最終国際規格原案(FDIS))
- 専門委員会(TC)・文科委員会(SC)のPメンバー(有権者)の2/3以上賛成 かつ
- 反対が投票総数の1/4以下
⑤承認(最終国際規格原案(FDIS)⇒国際規格(IS))
- 専門委員会(TC)・文科委員会(SC)のPメンバー(有権者)の2/3以上賛成 かつ
- 反対が投票総数の1/4以下
⑥発行(国際規格(IS)発行)
発行後、原則5年毎に定期見直し
基本的に、NP⇒WD⇒CD⇒DIS⇒FDIS⇒IS⇒発行 を覚えれば良いでしょう。
◎Fastーtrack制度:②作成⇒③委員会を端折ったこと、技術革新のスピードアップのため
マネジメントシステム認証制度
マネジメントシステム認証制度:会社が基準合格か否か、会社外の人が判定する
合格⇒認証文書(登録証)を発行・社会一般にも公開する
ISO(国際標準化機構)⇒『認証機関』⇒会社の審査
◎『認証機関』に登録するまで
- 公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)・一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)の認定機関に出願申込み
- 認定機関は『認証機関』の事務所の立入・実際の審査の現場に立会い、国際規格に従った審査活動か否か確認
- 試験に合格
- 『認証機関』の資格取得
◎マネジメントシステム認証制度の国際的な同等性
日本には37団体の認証機関があります。下記参照
認定されたマネジメントシステム認証機関 | 公益財団法人 日本適合性認定協会 (jab.or.jp)
世界各国にも複数の認証機関があります。認定機関も1カ国1機関が基本です。
これで運用すると、国を1つ1つ認証しなければならず、煩雑になります。
そこで、各国の認定機関を1つにまとめた団体が、
IAF(国際認定機関フォーラム):IAF国際相互承認の制度で、重複する認証を回避・簡略化
IAF(国際認定機関フォーラム)に登録した国同士は同等⇒その国同士の認証機関も同等⇒認証を取得した会社も同等と見なすことができます。これで、煩雑さを軽減しています。
というわけで、ここまでで2部終了です。どうしてもわかりにくいところがあるかもしれませんが、そこはご了承願います。
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