引き続き、QAエンジニアの私がこの本より、一般の方たち向けにかみ砕いていきます。
ISO45001:労働安全衛生マネジメントシステム
労働安全衛生とは
◎労働安全衛生
ISO45001は2018年に発行された国際規格です。この規格は各下記を意味します。
「働く人の負傷および疾病を防止すること、並びに安全で健康的な職場を提供すること」
個人の努力のみならず、組織の仕組みも必要です。
日本では、ISO45001の発行前に、危険予知(KY)・5S活動などで労働災害防止に貢献していました。しかし、詳細すぎることから内容の盛り込みは不採用になりました。
私の所属する会社の工場も、5S活動・安全パトロール・職場巡回などが導入されて、より良い職場環境を形成する努力がなされています。
ISO45001は世界で共通化されている唯一の規格で、今後の普及が期待される規格です。
◎日本と欧米の安全管理の違い
日本の安全衛生
- 災害件数0件を目標
- 努力で、二度と起こらない
- 安全にコストかけない
- 自分の身は自分で守る
欧米の安全衛生
- 災害が起こっても仕方ないから、休業・後遺症・死亡まで行かないように
- 努力しても、起こってしまう
- 安全にコストかける
- 組織・ルール通りに行動させる
危険源の特定
◎危険源
危険源=「負傷および疾病を引き起こす可能性のある原因」(ISO45001 3.19)
危険源の例
- 作業機械での負傷・発火や凍結の負傷・高所作業中の落下(身体的要因)
- 長時間労働・ハラスメント(社会的要因)
これら全体を把握することが重要です。
◎危険源の特定から想定されるリスクの評価方法
想定されるリスクの中から大きな危険源を優先することで、有効な対策を検討することができます。
①加算法・積算法による危険源の特定方法
危害の程度(A) | 点数 | 危害の発生(B) | 点数 | 頻度(C) | 点数 |
致命的(死亡・後遺症) | 10 | 確実(90~100%) | 6 | 毎日 | 4 |
重大(休業・被災者10人以上) | 6 | 確率40~90% | 4 | 月に1回以上 | 3 |
軽度(不休・被災者数人) | 3 | 確率10~40% | 2 | 年に1回以上 | 2 |
軽微(かすり傷) | 1 | 確率ほぼゼロ | 1 | 10年に1回以上 | 1 |
積算法:危害の程度(A)×危害の発生(B)×頻度(C)
私の会社では積算法で行っています。実際の事例を基に決めてみましょう。
例:トラックからの荷下ろしを素手で運び、転んで荷物に押しつぶされる
⇒(重大(6)×確率10~40%(2)×毎日(4)=48)⇒48から30未満に落としたい
⇒(A)の「重大」を「軽度」にできれば達成可能⇒素手ではなく、リフター・台車を使う
⇒(軽度(3)×確率10~40%(2)×毎日(4)=24)(ちょっと強引ですが・・・)
②リスクマトリクス法による危険源の特定方法
確実 | 可能性大 | 可能性小 | ほとんどない | |
月1回以上 | 年1回以上 | 10年に1回以上 | 一生に1回以上 | |
致命的(死亡・後遺症) | 16 | 15 | 12 | 8 |
重傷(全治4日以上) | 14 | 13 | 10 | 5 |
軽傷(全治3日以上) | 11 | 9 | 6 | 3 |
微傷(絆創膏程度) | 7 | 4 | 2 | 1 |
実際の事例を基に決めてみましょう。
例:丸のこ盤の使用で指を切断(可能性大&重傷=13)⇒13から10に低減したい
⇒丸のこ盤に指が入り掛かったらインターロックで停止・丸のこ盤の刃の部分に指が入らないような構造にする⇒(可能性小&重傷=10)(これもちょっと強引になりました・・・)
2種類のリスクと機会
「労働安全衛生リスクと機会」:各現場で想定される負傷・疫病のリスクと機会
⇒丸のこ盤・旋盤・プレス機械などから指の負傷などの災害リスクは何があるか
「労働安全衛生マネジメントシステムのその他のリスクと機会」:マネジメントシステムの運用に関して想定されるリスクと機会
⇒新人教育は十分か・ハラスメントはないか・コンプライアンスは守れているか
ワークショップ④
当書籍に則り、カレー屋さんを例にしたワークショップです。
◎労働安全衛生
加算法を用いたリスク評価をしていきます。
危険源 | 危害 | A | B | C | 合計 |
火を使用した調理 | 火傷を負う | 3 | 2 | 2 | 5 |
一酸化炭素中毒などの疾病を発症 | 4 | 4 | 1 | 9 | |
お店の火災 | 4 | 2 | 1 | 7 | |
包丁を使用した調理 | ケガを負う | 1 | 2 | 2 | 5 |
調理場の熱 | 熱中症 | 4 | 3 | 2 | 9 |
高く積んでいる材料など | 材料が落下してきた際に負うケガ | 3 | 2 | 2 | 6 |
長時間労働 | 肉体・精神的負荷 | 2 | 2 | 2 | 6 |
A:危害の程度 B:危害の発生率(可能性) C:頻度
◎リスクを低減
・一酸化炭素中毒などの疾病の発症
⇒十分な換気・設備の定期点検⇒実施可能⇒実践
・熱中症
⇒空調機システム導入⇒イニシャルコストが高い⇒実施不可
⇒十分な換気・定期的に休憩・水分補給⇒実施可能⇒実践
◎安全で健康に働ける職場づくり
私の会社(工場)でも、以下のことをしております
- 試験室マップに危険と思われる箇所に印を付けて掲示する
- もしもの災害などの対応に関するフローチャートを掲示する
- 定期的に試験室を作業者以外の人が見るetc…
おそらく、ほとんどの工場が同じ対応をするかと思います。しかし、抜け漏れも必ずあるため、日々成長するためにも、終わりのない課題になると考えられます。
以上がISO45001となります。強引になった箇所もありますが、ご了承願います。
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